さよなら!決別の日 | 五体不満足★猫版

さよなら!決別の日

獣医さんに、思い切って、病院を変えたいのですがと相談してみた。

「ここまで来るのにかなりお金が掛かるし、そのお金を治療に当てたほうが有効かな、と思ったんです。移動時間中に、小龍がかなり車酔いしてしまうのも気になりますし・・・。」
とたんに、コレまでやさしかった獣医の顔が無表情になる。
当たり前か、夜中にたたき起こされて親身になって手助けしたのに、病院を変えるときたもんだ。
そりゃ「えー」てなもんだろう。

「いや、別に、僕はかまいませんがね。毎日来るのが大変なら別に一週間に一度でもかまいませんよ」
医師は憮然とそう答えた。
え?毎日来なきゃダメ、って言ってたのは、あれは・・・。
「とくに毎日来てくれても、薬出す必要も無い猫だしね。僕のやってるのはテーピングだけだから。あなたがテーピングできれば別にさ、通院しなくてもいいんだし」

なにー!

私は、テーピングの交換とあわせて、体調管理なんかもしてくれてると思ってたんですよね。てっきり。だからなんだかその言葉を聞いて「え?え?え?あれ?」という、脳内恐慌状態に。
しかし、呆然と立ち尽くす私に、坂本教授似のその先生はあきらかに怒りを含んだ言い方で
「はい、いいですよ。帰って。」
と。

えー。

受付でお金を払うと、受付のお姉さんが、診察室での状況を知らずに明るく「にゃんちゃんのお名前、決まったんですね?シャオロンちゃんって言うんですか、かわいいですねえ」なんてのんびりしてる。
はあ、とかなんとか生返事していると、看護婦さんがいつものように帰りのタクシーを呼んでくれようとした。
すると診察室の中から医師が飛んできて
「もういいんだ。タクシー呼ばなくていい。この人勝手に自分の足で歩いて帰るから」

えー!!!!

看護婦さん真っ青。
「歩いて帰るって・・・ここがどこだかわかってますか!先生!」
と、抗議してくれる看護婦さん。しかしなんだかもう、心が冷め切って、どうでもいい気分の私。

「あー、いいですいいです。歩いて帰ります。歩いて。」

困惑する看護婦さんを背に、私はフリースのひざ掛けで小龍をくるみ、一人、病院を後にした。

時、3月中旬。
東北では一番寒さの厳しい季節。
真綿のような雪が降りしきるなか、携帯からタクシーを呼び、乗り込む一人と1匹。
沸々と怒りに震える私と、寒さでふにゃふにゃ鳴く小龍に、そのときのタクシーの運ちゃんはこう言ったのだった。

「あんれまあー、ずいぶん待だせで申しわげねーね。赤ん坊連れでるどは思ってもいながったがらしゃ、のんびり来だよはー」※おやまあ、ずいぶん待たせて申し訳ないね。赤ちゃん連れてるとは思ってなかったからさ、のんびり来ちゃった、の意

そりゃあ猫を抱えて雪の山道を徘徊してるなんて思いませんよね。あたしもこんなところを一人で歩くなんて思わなかったよ!