小龍に嫌われた | 五体不満足★猫版

小龍に嫌われた

かくして、私と小龍の波乱万丈な日々は始まった。

相棒も、私の頑固さにお手上げ状態となり、家で飼うことに同意を示した。「しょうがない。あんたがそこまで言うのなら」などと言っていたが、結局やつも情が移ってしまっていたのだ。

病院にはしばらく毎日通った。
テーピングで固定している下半身は、半日もしないうちにおしっこまみれになってしまう。そのために、テーピングをする前に、下半身に脱脂綿をいくらか挟み込む作戦を、獣医はたてた。
しかし、やはりこまめにとりかえないと、子猫はすぐにおしっこまみれになってしまう。

そうすると毛皮にしみこんでたいへん臭い。
しかも皮膚に付着して肌が炎症を起こす。

「しかしこれしかてだてはありませんから」

との医師の言葉。
うーん。私はなんとなく釈然としないものを感じ始めていた。

テーピングはがっちりと行われる。これは試しに病院で挑戦してみたのだが、素人に出来るものではなかった、まず小龍が嫌がって暴れる。抑えながらテーピングすると、テープがたわむ。なかなかどうして、一苦労なのである。

このために毎日山奥まで5000円近くかけて通院するのも、懐事情を考えると先行きが暗い。病院を近くの動物病院に移すことを考え始めた。

シャオロンはといえば、常に警戒態勢だった。
毎朝風呂に入れられ、病院に連れて行かれ、テーピングをされて帰ってきて、さあ遊ぼう!と思うとかごから出してもらえない。自由に遊べるのは数時間。兄弟猫はぴゅんぴゅん飛び回っているのに、自分はころん、とそこにじっとしていなければならない。
ご飯をもらおうと母猫のところへ行けども、兄弟猫との争奪戦にあえなく敗北。
彼のイライラはピークに達していた。

「全部こいつのせい」
と、小龍が思ったかどうかは定かではないが、ある朝から小龍は私と目を合わせてくれなくなった。
「おやちゅ!」
の催促もなし。
声をかけても知らん振りで絶対にこっちを向こうとしない。
なんだか、なんだか態度が露骨におかしい!のである。

がーん・・・・・・・・・。

思いあたるフシはありすぎだった、
はしゃぎまわって遊んでいれば、医師が「あまり動かさないように」といった言葉を思い出してそれを止め、楽しみを取り上げるようなことをしていた。
いやだ!と暴れても、毎朝のお風呂を欠かさなかった。
いやがっている彼にテーピングを毎日してもらった。

そりゃあ嫌われますとも。
猫は「自分のため」なんてわかりませんもの・・・。

完璧に嫌われた・・・。
私は猫のおやつを片手にがっくりと項垂れた。

考えて見れば、このころの私は常にピリピリしていた。
小龍がとんでもないジャンピングスタイル(腹筋で床を蹴ってジャンプするという荒業)を見せれば「ひー!やめてぇぇ!」と無理やり押さえ込み、かごにいれて安静にさせようと躍起になっていた。
そんなこと、猫にわかりっこない。
それどころか逆にストレスためこむっての!

私のそんなピリピリが伝わるのか、私が近づくと逃げるようなそぶりを見せるようになった。大の大人だが泣いた。とても悲しかった。