あきらめる?あきらめません、絶対に! | 五体不満足★猫版

あきらめる?あきらめません、絶対に!

電話をかけまくる。
隣で意気消沈した気の弱い恋人が、「でも、もう夜だし。やってないよ」
などと震えた声で虚空に向かってつぶやいている。自分の手で子猫を怪我させてしまったことがよっぽどショックだったのだろうそりゃあそうだ。

しかし、私は聞こえているのに聞こえてなかった。
「うるさい、ちょっと黙ってて」と非情な一言を投げつけ、片っ端から動物病院に電話した。
時刻は深夜1時を回っていた。

夜間緊急時に対応してくれる病院の存在は絶望的だった。
子猫は痛みを感じていないのか、扉に挟まれた瞬間声を上げただけで、なんと普通に走り回って兄弟たちと遊んでいる。
その姿がまた怖い。言っちゃ悪いけど、ほんとに怖かったんだ!
そんな姿でけろっとされていると、突然死んじゃうような気がして泣きたくなったし、何より、今動いちゃ良くないんじゃないの?という不安があった。
でも、1号はこっちの心配をよそに「ごろにゃーん」などと鳴いている。

電話はつながらない。
「ねえ、インターネットで病院調べて。仙台、動物病院、24時間で検索してみて!」
ぼーっと突っ立っているのが精一杯、といった風情の恋人に発破をかけてみるが、恋人はもうすでに心ここにあらずで、検索しては見るものの探すことが出来ない、といった具合。
そのうち恐怖と不安に悲しみと苛立ちがないまぜになった気持ちになって、ちくしょー!使えねえ!この男使えねえ!などと心で叫ぶ非道モノの私!

「ねえ、あきらめよう。もう、だめだよこの子」

恋人の泣き言が部屋にじんわりと響いたとき、私は怒鳴っていた・・・。
多分、あのときの私の顔は般若のようだったんじゃなかろうか・・・。

「そんな言葉はやってみてから言えー!」