真夜中の事件 | 五体不満足★猫版

真夜中の事件

そのころ、私と相棒が暮らす部屋はとんでもないことになっていた。
飼い猫2匹がねんごろな仲になり、めでたく先月出産終了。
時は流れて一ヶ月。
ヨチヨチ歩きの小さな毛糸玉たちが、そこかしこを徘徊していた。その数5匹。
グレーのチンチラもどきが3匹に、チャウチャウみたいな風貌の茶色の猫が1匹、プッチンプリンみたいに、頭のほうはクリーム色で、おしりの近くがカラメル色の猫が1匹。グレーのチンチラもどきたちの見た目は全く区別が付かない。毛の長さの違いも、模様の違いも、まだなんとなくはっきりとしない。

私と相棒は大の猫好き!
「あー、猫はいいなあ。子猫に囲まれて、親猫のかいがいしさを見つめて寝起きができるなんて、なんて幸せ!」
なーんて悠長に、私たちはひと時の幸せに身を任せていた。

長いこと一緒に生活し、会話が少なくなってきた私たち恋人は、猫がやってきてからよく喋るようになった。今日はね、こんなことをこいつらがやっててね、とか。今日は毛玉をはいちゃったんだよね、とか。とにかく、3倍以上会話が増えた。

私たち恋人は、猫で繋がっていたといっても過言ではなかったかもしれない。
子はかすがい、なんていうけれど、私たちの場合は猫はかすがい!
にょほほーん、と、この毛玉たちとのふれあいを満喫するときが続く。と、思っていた・・・。

そう、その日の真夜中まで。

「ぎゃあ!」

という、赤ん坊が小さく助けを求めるような声が聞こえた。一瞬だった。
何!?と目を凝らしたときには、そのグレイのチンチラもどき1号は、後ろ足をだらりと投げ出したまま、糞尿をまきちらして匍匐全身のような形で部屋をばたばたと走り回っていた。

その光景を、私は一生忘れないだろう。

親猫たちもあっけに取られ、呆然としているようだった。
子猫たちは、その兄弟猫の異常事態に身を硬くし、耳を伏せ、体を低くして警戒態勢を取った。

恋人が座り込んで「ごめん・・・」とつぶやいたまま他の猫たち同様、動かなくなってしまった。

事件がおきた。
恋人が、クロゼットの扉を閉めようとしたときに、運悪く横からすべりこんできたその1号を、はさみこんでしまったのだ。

「ごめん・・・だって・・・ごめん」
と、うわ言のように繰り返す恋人に向かって、「ねえ!いいから病院!病院!」と、私は反射的に叫んでいた。
パニック状態だった。

だらりと力なく、妙な形に投げ出された子猫の後ろ脚が恐怖だった。
その日は、子猫たちが生まれて丁度1ヶ月目だった。